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父が乳を与える

手の対比
(大好きな父ちゃんの手)


「目を使わない」
「水にさわらない」
「重いものをもたない」
この3か条が、最低限でも産後約3週間まで、できれば6週間は守りたい、の鉄の掟だった。
つまり、産婦は家事をしてはいけない。子育ても、できれば授乳とおむつ交換程度にとどめておきたい、ということだ。
家事の一切を取り仕切ってくれる存在が必要だった。
我が家の場合は、主に義母、そしてわたしの実母が徹底的にサポートしてくれたが、特筆すべきなのが夫の働きだった。
彼は、わたしが寝たきりの3日間、「父」としての役割と、「母」としての役割、どちらも担ってくれたのだった。

まず、わたし自身がまだ、授乳がうまくできない。起き上がることすらできないのだから、当然と言えば当然だ。
なので、乳頭吸引器でちょこちょことおっぱいをしぼり、それを小さなビーカーにためて、綿球にひたしてたまに乳を与えるのが、夫の重要な任務となった。
「たま~、めしだよー」といいながら、夫はたまに白湯と乳を交互に与え、たまは、小さなのどをごくごくと鳴らすようになった。
彼女は大きな目を見開いて、夫の顔を見つめながら、必死で少量の乳を飲んでいた。
わたしが初めて自分の乳を与えることができたのは、産後3日目、起き上がってからだった。
その時の感動は忘れられない。自分の乳を与えられるようになって、初めて母親スイッチがオンになると言っても過言ではなかった。

ところが、安定して授乳タイムが送れるようになるには、もう少し時間が必要だった。
授乳にはちょっとしたコツが必要だ。
どのように抱いたらいいのか、どの角度で乳首をくわえさせたらいいのか、わからない。
第一、当時のたまには、おっぱいに吸い付く力がない。
お互いにうまくいかなくて、わたしは焦る。おっぱいを押し付ける。たまは泣く。そして飲まない。飲んでもすぐに吐き出す。
悪循環のループだった。

結局、一度や二度授乳が成功しても、ごくごく飲むにはほど遠く、夫が綿球で授乳する日々が続いた。
しかし、綿球では、飲んでもせいぜい10ml程度だ。これで、本当にたまのからだに必要な栄養が供給できているのだろうか?
そもそも小さく生まれてきたたま。生理的体重減少もあり、体重は2020gまで落ちた。かなり心配な状態だった。
それでもわたしたちは、たまを生かさなければならない。夫は辛抱強く、たまに乳を与えた。
うまく授乳できないことにわたしは焦り、精神的に参りそうだった。
乳が乳房にたまり、固く大きくなり、少しずつ痛くなり始めていた。
わたしはたまにおっぱいを吸ってほしくて、一生懸命パイを押し付けた。
その形相は、必死だったらしい。怖かったらしい。当然、たまは泣く。
夫曰く、「たまにとっては、巨大な宇宙船が襲来するかのような恐ろしさだったに違いない」
そして、ついにはわたし、決壊。産後4日目の夜に大泣きしてしまった。

翌朝、純子先生の検診があった。肩の力を抜いて、乳房とたまの鼻の間に空気層をつくった。赤ちゃんが乳首にカプッとくわえつけるよう、うまいタイミングのつかみ方を教えてくれた。
そこから、ようやく授乳がうまくいくようになった。
たまは、母から乳を直接もらえるようになったのだ。

試行錯誤しながらも、徐々に授乳がうまくいくようになった。それに連れ、わたしの精神状態も安定するようになった。
しかし、しばらくの間は、たまにとっては「父 > 母」だった。
やはり、生後数日の間、自分の命をつなぎとめてくれた、育んでくれた存在が誰であるのか、賢いたまはよくわかっているようだった。
「母 > 父」となったのを確信したのは、産後2カ月以上経ってからだろうか。
たまを抱く、あやす、遊ぶ…すべてにおいて、夫の行動は理にかなっており、たまにとっても心地よいようだった。

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プロフィール

キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)

Author:キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)
団地暮らしと酵母生活の達人目指す、フリーのライター・編集者。仕事は、生きることそのもの。水環境ジャーナリストを師匠に、鬼校閲者を友に、チーム仕事も繁盛中でございます。
ウエダ家とともにCOBOの普及活動に勤しむ、日本初のCOBOライターでもあります。
得意分野は、食環境、住環境、地球環境。地球温暖化や食の安全・安心、エコハウス関連の仕事が多い今日このごろ。仕事の内容についてはカテゴリ【work】をご参照ください。
夫と愉快な仲間たちがやっているNPO法人【Waveよこはま】のブログにてエココラムを執筆中。
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☆キタハラ、2009年1月に出産いたしました☆ニンプ日記は未完のまま産後生活に突入。ぼちぼち、育児日記出産ドキュメント布おむつ生活産後の体のこと姿勢のことなどを書きつづっています。
相変わらず時系列はぐちゃぐちゃ。しかし、テーマごとに思考を詰め、まとめる作業は苦しくも、おもしろくあります。気長に見守っていてください。
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