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たま出産ドキュメント(4) ~自立したたま~

胎盤


真っ赤なたまがわたしのおなかの上にのった。わたしはおっぱいを吸ってほしくて、パイを丸出しにしていた。
おなかの上で、確かに小さな生命体が蠢いているのがわかる。おっぱい近くまできて、ちょん、と口をつけたかどうか。これも、興奮して覚えていない。

おそらく、純子先生がたまのからだについた血や胎脂をきれいにしてくれたのだろう。
きれいになったたまと一緒に、彼女のへその緒の拍動が止まるのを待つ。
すでにわたしのからだから出た胎盤にまだつながっているたま。
たまがおなかの中にいる間、わたしの食べたもの、血液、養分を、酸素を、生きるための全てをたまに送ってくれていた胎盤。
この両者をつなぐ透き通った青白いコードが、まだかすかに脈打っている。
へその緒は、拍動が少しずつ小さくなるのとともに、その役割を終えようとしている。
拍動が止まったその瞬間が、たまが、自立する時だ。
自分で呼吸をして、自分でおっぱいを吸って、自分の力で生きなければならない。
病院では産まれてすぐに切るへその緒。しかし、バースハーモニーの自宅出産では、赤ちゃんが自分の力で呼吸できるようになるその時を待ってくれる。
まさに、「赤ちゃんが産まれてきたい時」「赤ちゃんが自分で呼吸する瞬間」を「待つ」お産なのだ。
胎盤とたまを分かつのは、夫の役割となった。
そうっと、へその緒にはさみを入れる。
特に音もせず、痛そうでもなく、静かに、胎盤はその役割を終えた。

そうしてたまは、初めて「たま」という個人になった。

純子先生が吊り秤でたまの体重を量る。
「…小さいね。病院だったら保育器行きだったよ」
と言われる。最初はその意味がわからなかった。
たまは2330gで産まれた。一般に2500g以下で産まれた子どもを「低出生体重児」といい、特別なケアを必要とする場合が多いのだという。
病院だったら保育器に入り、一定に保たれた温度湿度の中で過ごす。そして体重が増えて安定した状態になったらようやく退院できるのだそうな。
要は、体重が少ない分脂肪も少なく、熱を蓄えておくのが大きな子に比べて上手でない。体温調整をしっかりしてあげなければならないのだ。
しかし、わたしたちは、自分の子どもが低出生体重児で産まれてくるなどと考えてもみず、また、そのことに対する認識もあまく、その時はただ、たまが産まれてきた興奮でいっぱいだった。それだけだった。

わたしのからだから出た胎盤を食べてみることにした。
レバーのような、上質の馬刺しのような、濃厚なんだけど臭みもなく、とても美味しい肉塊だった。
お産に備えて長い間玄米菜食を徹底していたわたしが、肉を食む不思議。
胎盤は、天然の子宮収縮剤だという。
動物は出産後、自分で自分の胎盤を食べてからだをケアする。
それと同じことなんだなあ、と、何となく納得しながら、たいへん美味しく、久々の肉の味を堪能した。

時々、おなかがキューッと縮まっていくのを感じた。
これが、後陣痛というものか。
急速に子宮が元に戻ろうとしているのを感じる。結構痛い。
8カ月かけて大きくなったおなかの皮はどうなっているんだろう? ぶよぶよしているのか?
気になってさわってみると、意外と固く、戻ってきている。

そういえば、わたしはこれから数日間、おむつで過ごさなければならないのだ。
おむつの準備すらしていなかった。助産師の楠本さんがわざわざ助産院まで戻っておむつをとってきてくれた。
おむつ用に着用するネグリジェすら用意しておらず、結局、おむつの上にバスタオルをラップスカート風に巻いてしのいだ。
恰好なんてどうでもいいや。もう、どうにでもなれ。
そんな、あられもない姿でわたしは数日間横たわることになる。


気がついたら、夜が明けていた。
諸々の後片づけを終え、純子先生たちは我が家を去った。次に来るのは翌日だという。
興奮状態のまま小さなたまと一緒に新米父母は取り残された。
かわいい我が子を迎える準備もできていない、親になる心の準備もろくにできていな状態で、いきなり、たまとの生活がスタートした。


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プロフィール

キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)

Author:キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)
団地暮らしと酵母生活の達人目指す、フリーのライター・編集者。仕事は、生きることそのもの。水環境ジャーナリストを師匠に、鬼校閲者を友に、チーム仕事も繁盛中でございます。
ウエダ家とともにCOBOの普及活動に勤しむ、日本初のCOBOライターでもあります。
得意分野は、食環境、住環境、地球環境。地球温暖化や食の安全・安心、エコハウス関連の仕事が多い今日このごろ。仕事の内容についてはカテゴリ【work】をご参照ください。
夫と愉快な仲間たちがやっているNPO法人【Waveよこはま】のブログにてエココラムを執筆中。
このブログはのんびり気ままに更新中。

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☆キタハラ、2009年1月に出産いたしました☆ニンプ日記は未完のまま産後生活に突入。ぼちぼち、育児日記出産ドキュメント布おむつ生活産後の体のこと姿勢のことなどを書きつづっています。
相変わらず時系列はぐちゃぐちゃ。しかし、テーマごとに思考を詰め、まとめる作業は苦しくも、おもしろくあります。気長に見守っていてください。
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