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たま出産ドキュメント(3) ~その時は、あっという間にやってきた~

ひとみの花


「頭が見えているよ」
純子先生の言葉に、ああ、そうか、と納得する。
もう、いよいよお産なのだ。この痛みは出産の痛みだったのだ。ミジンコ(たまの胎児名)は今、産まれようとしているんだ。
となれば、途端に気が軽くなった。あとちょっとでこの痛みは終わる。そして、人生の新しいステージが始まるんだ。
ベッドにシートが敷かれて腰を浮かせた状態のまま、横向きになって足を上げ、そのまま、側臥位で出産することになった。

もう一度、強い痛みが来た。股の間が灼けるように熱い。ああ、開いているんだな、頭が出てこようとしているんだな、というのがわかる。
巨大なうんちが出そう、そんな感覚(笑)。
「ハッハッハッ」と言われる。
ハッハッハ…というのは、逃す呼吸だ。短距離走でいうところの、ゴールした後の流しみたいなもんか。北京オリンピック100メートル走のウサイン・ボルトのラスト20メートルの走りみたいなイメージだ。
夫はその間、ビデオを片手にベッドの上を八艘飛びしていた。ビデオを撮ったり、「あれない! これが必要!」の声に右往左往したり、「それより手を握っていてあげて!」の声に促されたり。
わたしは、「ビデオはいいから、しっかり目に焼き付けておいて!」と願っていた。しかし彼は、その瞬間をどうしても自らの手で残したかったようだ。

2回痛みが来て、2回「ハッハッハッ」と逃して、スルリ! と生温かな物体が滑り落ちたような気がした。
最高に熱い股が、急に楽になった。あれ? って感じ。
「産まれたよ!」
たまが、産まれた。純子先生が到着し、わずか15分。1月22日、午前4時39分に、たまは産まれた。

「ええ~、もう産まれたの? 本当に産まれちゃったの?」
これが、わたしの本音だ。陣痛との別れはあまりにも呆気なかった。最高の快感を味わうどころではなかった。
夫の顔を見たら、大きな目からポロポロ涙をこぼしていた。彼のこんな顔は、いまだかつて見たことがない。それだけで、胸がじーんといっぱいになった。
我が子の顔はどんなだろう。泣き声は?

うにゃうにゃ言っている。
ギャーギャー泣いているわけじゃない。でも、確かに生きている。

コンタクトをしていないから、よく見えない。
でも、赤い赤ちゃんがいる。小さい。何だか信じられなくて、興奮していて、涙が出てきた。
そしてたまは、すぐ、わたしのおなかの上にのった。
温かくて、小さくて、それなのに、小さい手はわたしのからだをキュッとつかもうとしている。
……絶対的にかわいい! 
たまがおなかにのった瞬間に、わたしは、この子の母親なんだ! というスイッチが入った。

出産直後、ぬるい梅醤番茶を飲んだ。そしてすぐに、たまの誕生から2分後に、胎盤が出てきたようだ。
実は、その時の感覚はほとんどない。
わたしのおなかのなかあって、たまの命をつないでくれていた胎盤。
約500gという巨大な塊が子宮から出てきたというのに、感覚も感慨もほとんどなかったというのはどういうわけか。
たまの誕生があまりにもインパクトが強すぎて、半分、「うそだろ~」みたいな感じで、正直、夢見心地というか、半信半疑というか、痛みもすっかり忘れてしまうような、相当なハイテンション状態だった。


こんなに急に産まれてきちゃうなんて。
母以上のせっかち娘だな、この子は……。
ともかく、自分に起きたことを理解もできないまま、そして、何も準備がなされてない家に、たまはやってきてしまった。
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プロフィール

キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)

Author:キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)
団地暮らしと酵母生活の達人目指す、フリーのライター・編集者。仕事は、生きることそのもの。水環境ジャーナリストを師匠に、鬼校閲者を友に、チーム仕事も繁盛中でございます。
ウエダ家とともにCOBOの普及活動に勤しむ、日本初のCOBOライターでもあります。
得意分野は、食環境、住環境、地球環境。地球温暖化や食の安全・安心、エコハウス関連の仕事が多い今日このごろ。仕事の内容についてはカテゴリ【work】をご参照ください。
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☆キタハラ、2009年1月に出産いたしました☆ニンプ日記は未完のまま産後生活に突入。ぼちぼち、育児日記出産ドキュメント布おむつ生活産後の体のこと姿勢のことなどを書きつづっています。
相変わらず時系列はぐちゃぐちゃ。しかし、テーマごとに思考を詰め、まとめる作業は苦しくも、おもしろくあります。気長に見守っていてください。
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