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たま出産ドキュメント(2) ~頭が見えている~

朝露

明日、半日仕事をがんばれば、あとは残り少ない妊娠期間を満喫できる……。
そう思って床についたのが、1月22日の午前零時ごろ。
その日、明け方から前駆陣痛に突き合わされていた夫は、疲れ果ててすでに夢の中。
彼を起こさないようにそーっと布団に入り、目をつむる。

しかし、眠れない。
お腹がきゅーっと痛む。収縮しているのがわかる。生理痛のような鈍い痛みが、定期的にやってくる。
ああ、今日一日、疲れがたまっていたからなあ。また前駆陣痛だろうなあ。
そう思って目をつむるが、痛みは収まるどころか、どんどん強くなってくる。
結局、眠れる状況になく、夜中1時ごろ、布団から起きてリビングの炬燵に寝そべりながら痛みを味わうことにする。

痛みは、定期的にやってきて、確実に強まってきていた。
1時半ごろにはだいぶ痛くなり、痛みを逃すために「ふう~」と、大きな息を吐いた。
助産院の呼吸教室では、「息を吐くということは、手放すこと。大きく声を出して、今、自分に起きていることに対して抵抗しないこと」と習った。
声を出して、手放す。「う゛~」じゃなくて「あ゛~」と声を出して、力を抜く。
このころはまだ、自分で、陣痛がきた時間をメモにとる余裕があった。
2時半ごろには、わたしの大きな声に夫が起きてきた。このころには相当痛みが強くなっていた。

だが、これが本当に陣痛なのか、前駆陣痛なのか、わからない。
痛みの間隔はまだ7分。かと思えば次は5分だったり、10分空いたり。よくわからない。
時間も時間なので、助産院に電話をするのははばかられる。
だって、予定日まであと3週間近くある。
昨日血液検査をしたばかりで、今日お産だなんて……あまりにも早すぎる。
まだ我慢できる痛み…かもしれないから、もうちょっと様子をみよう。夜が明けても痛かったら電話しよう、などと言っていた。

痛みの間には、エンドルフィンというホルモンが出て素晴らしい快感を味わえることがあるという。
お産は、最高のエクスタシーであるという話も聞いていた。
それが味わえるのか? と、やや期待をしていた。このころは。

しかし、痛みは強くなるばかり。
何度も便意を催しトイレに駆け込むが、だんだん動くのすらつらくなってくる。自分自身が痛みに支配されていくのがわかる。
「…もう、限界!」と、助産師さんの自宅に電話したのが3時50分。
自分で話すこともできないくらいで、夫に話をしてもらう。
「しゃれにならない痛み!」とだけ叫んで、ともかくすぐに来てもらうように言う。

電話を切るや否や、「パン!」という音がして、股の間が生暖かくなった。
「破水した!」
リビングの炬燵の脇に置いていた座椅子を倒してベッド代わりにしていたが、それが、少し濡れた。
ああ、本当にお産が始まるんだ、と思った。
いよいよ寝室に移動しなければ。でも、動くのがつらい…。
もうすでに何分間隔かわからないくらいの強い痛みの間に、よたよたしながら寝室に移動する。
「痛い痛い痛い~!」と叫ぶわたしに、「頼むから、助産師さんが来るまでがんばって!」と夫。「産まないでくれ」というのが本音だったのだろう。


…当然、お産の準備は何もできていない。
ウォーターサーバーの水は、翌日来る予定だった。
赤ちゃんの肌着の水通しすらしていなかった。
せっかく買ったオイルヒーターは仕事場に置いたまま。寝室にすら移動していなかった。
純子先生の旦那さんにお産の写真を撮ってもらう予定で、勝負パジャマを買おうと思っていたが、その時着ていたのはよりによっていちばん汚らしいジャージと長袖Tシャツ、そして毛玉だらけのフリースベスト。
部屋の掃除すらしておらず、埃が舞うなかでの出産???

夫は、陣痛の合間に、出産の準備をあれこれしていた。
何がどこにあるのかわからない。何が必要なのかもわからない。わたしも、指示すらできない。
ほとんどパニックに近い状況の中で、彼は、一生懸命できることをやっていた。
わたしとて、それどころじゃない。股の間が焼けるように熱く、大きな塊が下りてきているのがわかる。
意識して止めなければ、産まれてしまう。
ともかく、純子先生が来るまで待ってくれ! 産まないようにするので精一杯だった。

ピンポーン。
純子先生と夫のkazzさん、助産師の楠本さんが来たのが、4時20分。電話をしてから30分後。
その時、午前4時20分。
すぐに内診をした純子先生。
「……頭が見えている」。

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プロフィール

キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)

Author:キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)
団地暮らしと酵母生活の達人目指す、フリーのライター・編集者。仕事は、生きることそのもの。水環境ジャーナリストを師匠に、鬼校閲者を友に、チーム仕事も繁盛中でございます。
ウエダ家とともにCOBOの普及活動に勤しむ、日本初のCOBOライターでもあります。
得意分野は、食環境、住環境、地球環境。地球温暖化や食の安全・安心、エコハウス関連の仕事が多い今日このごろ。仕事の内容についてはカテゴリ【work】をご参照ください。
夫と愉快な仲間たちがやっているNPO法人【Waveよこはま】のブログにてエココラムを執筆中。
このブログはのんびり気ままに更新中。

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☆キタハラ、2009年1月に出産いたしました☆ニンプ日記は未完のまま産後生活に突入。ぼちぼち、育児日記出産ドキュメント布おむつ生活産後の体のこと姿勢のことなどを書きつづっています。
相変わらず時系列はぐちゃぐちゃ。しかし、テーマごとに思考を詰め、まとめる作業は苦しくも、おもしろくあります。気長に見守っていてください。
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