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たま出産ドキュメント(5) ~興奮の嵐~

出産直後

純子先生たちが帰り、朝日が降り注ぐ部屋で新しい生活がスタートしたわたしたち。
ベッドの上には、ふにゃふにゃしている小さなたま。
そして、身動きがとれないわたし。

なぜ身動きがとれないかというと、出産直後の女性には安静が何より大切だという考えから。
バースハーモニーのお産では、産後、骨盤がそろうまでの3~7日間(人によってタイミングが異なる)は、トイレに立つことはおろか、体を起こして授乳することもできない。
この期間を完全に寝て過ごすことで、出産によって最大限に開いた骨盤を元に戻す、いや、元に戻すどころか、歪んでしまった骨盤が「本来あるべき位置に戻る」ように調整するのだ。
人によっては、お尻がワンサイズ以上引き締まることがあるという。
おそらく、この「骨盤直し」という名目上、産婦が徹底的に寝て過ごすことで、骨盤直し以上の休息、産後の回復を保証することになるのだろう。

ともかく、わたしはおむつをあてられ、寝たきりだった。
たまが泣こうが、おむつを濡らそうが、わたしは何もできない。
ただ、たまを見て、夫を呼び、彼が働くのを眺めるだけだ。
産後は目を使ってはいけないので(目を使うということは、大量の血が目や脳に行き交うことでもある。産後は「血」を使うことはNGなのだ)、コンタクトレンズはもってのほか。
眼鏡をかけるのがもどかしいので、ほとんど何も見えないような状態で、ぼんやりと過ごすほかなかった。

夫は普段から、家の中のどこに何があるのかを把握していない人だ。
ベビーグッズや調理道具のありかはちんぷんかんぷん。
なのに、妻は起き上がりもせず、「あれ持ってきて」と顎でこき使うばかり。
しかし彼はいらだちもせず、ひたすら妻と娘のために尽くす。
子育ては初めてのはずなのに、実に手際よくたまのおむつを換え、わたしに白湯を運んでくる。
夫の献身的な働きに、わたしは感動して涙を浮かべながら彼を褒め称える。

しばらくして、夫の両親がやってきた。
夕方には、山形からわたしの母が到着し、たまとの感動の対面。
誰もが皆、「信じられない」といった風で、生まれたばかりのたまを眺めていた。
せまい団地の一室を、おおぜいの大人が行き交う。
家の中はぐちゃぐちゃ。たまの着る服がどこにあるのか。いろんな種類のおむつがあるが、どれを使えばいいのか。わたし以外は誰もわからない。問い合わせと指示の連続。
何ごとにおいても手際がよく、テキパキと動く義父母は、朝からさっそく、家の中を整理整頓し始めた。
部屋の中に風を通し、掃除をし、汚れ物の洗濯をし、わたしのケア、たまの胎便がついたおむつを洗ってくれた。
わたしの母は、のんびりと、料理を手伝ってくれた。
我が家にある家電の使い方に四苦八苦し、また、誰がどのように食事をするのか、そしてわたしの産後回復食はどうすればいいのか(3日間は玄米粥のみ、と言われていた。それで足りるのかと心配する親たちに、理由はあとから話すからともかくそれを遵守したいとの旨を話した)、たまの食事(まだおっぱいが出ない)はどうするのかなど、あれこれ、試行錯誤のやりとりが行われていた。
誰もが、自分にできることを精一杯やっている。たまのために、わたしのために。
大きな混乱のなかだけれども、しかしそこには、確かな喜びがあった。

寝たきりのわたしは、小さいたまが、動いたり、小さな声をあげたりするたびに、感動して涙を流していた。
親たちの喧騒をよそに、寝室でのんびり過ごしていた。
そして誰か彼かが入れ替わり立ち替わり寝室にやってきて、たまを眺めては「かわいいかわいい」を連呼し、興奮状態にあった。

……でも、たまは小さな小さな、そしてか弱い存在だった。
暗く、静かで、温かな胎内にいたたまが生まれた場所は、真冬のおんぼろ団地の一室。そして明るく賑やかな家庭。
彼女がその環境に順応するには、まだ早すぎたのだ。
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プロフィール

キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)

Author:キタハラマドカ(おでこが広いからtecoちゃんがニックネームでした)
団地暮らしと酵母生活の達人目指す、フリーのライター・編集者。仕事は、生きることそのもの。水環境ジャーナリストを師匠に、鬼校閲者を友に、チーム仕事も繁盛中でございます。
ウエダ家とともにCOBOの普及活動に勤しむ、日本初のCOBOライターでもあります。
得意分野は、食環境、住環境、地球環境。地球温暖化や食の安全・安心、エコハウス関連の仕事が多い今日このごろ。仕事の内容についてはカテゴリ【work】をご参照ください。
夫と愉快な仲間たちがやっているNPO法人【Waveよこはま】のブログにてエココラムを執筆中。
このブログはのんびり気ままに更新中。

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☆キタハラ、2009年1月に出産いたしました☆ニンプ日記は未完のまま産後生活に突入。ぼちぼち、育児日記出産ドキュメント布おむつ生活産後の体のこと姿勢のことなどを書きつづっています。
相変わらず時系列はぐちゃぐちゃ。しかし、テーマごとに思考を詰め、まとめる作業は苦しくも、おもしろくあります。気長に見守っていてください。
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